未来の記憶

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妻が手術をしたら1600万円の請求書!~奇々怪々なアメリカの医療保険システム

■TPPの不安


自由競争で規制がないと医療はどうなるでしょう?
医者が吹っかけ保険屋が値切る。保険に入ってなければ法外な治療費を請求されて個人破産・・アメリカの無茶苦茶な医療・保険の実体を、アメリカ在住の方が報告してくれています。


1月15日に奥さんが頸椎の椎弓切除という大がかりな手術をして、請求書が16万ドル来たことは前に書いた通り。  今日はその後日談。(リンク


 (中略)


 さて、問題は医療費です。保険屋と交渉して僕の支払いは全額タダになったと思ってたんだけど、後で勘違いとわかった。これはこちらの勘違いだからしょうがない。結局使ったのは保険の一部である「支払い口座」(ここから医療費を払う。他にどんな医療にも使えるので、自分のお金と同じ)の14万円くらいと、たぶんあと持ち出しが5万円くらい(術後の通院費など)。ま、元々の請求が1600万だからしょうがないか、と思っていたんですけど...。

 この間、保険会社と医者の間の支払い明細を見てぶっ飛んだ。主治医の他に、麻酔や入院費など、請求総額は結局166,704.81ドル。日本円で1600万円ちょうどです。この金額に対して、保険会社がいくら払ったと思います?全部で25,436.53ドル、つまりたったの(?)244万円。僕の支払いがこの時点で14万円だから合計で258万円。さて、残りの1342万円はどうなったでしょう?

 

 正解:保険会社が値切った。
 もっと正解:医者が最初から吹っかけてる。

 

 実際、いくつもある請求項目のうち、8,593.50ドルは「全額却下」されてて、その理由は「同じ内容を2回請求したから」です。もう無茶苦茶。この分は元々請求する根拠がないとして、請求総額158,111.31ドルのうち、保険会社と僕が支払った分は合計で26,874.70ドル。つまり、請求された金額のちょうど17%しか払ってない!!!逆に言えば、医者は本来払ってもらうべき(それで満足する)金額の6倍を吹っかけてるっていうことになります。あり得ん。ま、もっとも、この保険会社はいろんな医者と「特約」を結んでて、うちの奥さんもそれがあるからこの医者にかかったので、その分、医者に対して態度が大きい(つまり支払い率が他の保険会社より低い)のは理解できます。それにしても6分の1!!!

 そこでもう一問問題です。僕がもし保険に入っていなかったら、いくら支払う必要があったでしょうか?正解は1600万円!保険屋が値切るにあたっては、「相場に照らすとこれは高すぎる」とか何だかんだ文句をいうのですが、素人に出来るはずがない。重複で請求された8,593.50ドルだって、支払う必要があると思っちゃうかも知れない。その場合は丸損です。

 前にも書いたかも知れませんが、アメリカで個人破産する人のうち、75%は医療費が原因です。今までにも気がついていたことですが、医療保険に入っていると、もし医療費の一部を自分で払うことになっても、その金額は保険会社が値切ってくれるので、半額くらいになってお得。10年くらい前に医者から請求書が来て、真面目に支払いに行ったら何も言わないのに2割だかまけてくれたのも、今思うともう少し待ってれば保険会社が交渉してくれた額で済んだから、向こうが申し訳ないと思ったんでしょうね。逆に、医療保険に入っていないと、医者が吹っかけてくる金額がそのまま負債となっちゃうということです。

 国民皆保険がない、というのはこういうことです。保険を持ってる人は何とかなりますが、持ってないと地獄。つまり、格差がモロに出ます。これが市場原理に任せた自由競争。その影響は医療費だけではなく、金融(特にクレカ)、雇用(ご存知の通り)、教育(街によって、公立は全くダメなので、学費を払って私立に入れる必要あり)、アメリカ生活すべてにわたって関わってきます。

さらに恐ろしいのは、例えば医者と保険屋のやり取りなんて誰も知らない(というか、その気になって調べないとわからない)ということ。つまり、一般庶民はルールのわからないゲームに参加させられているようなものだ、ということです。自由競争で、規制がないということは、「知らない方が悪い」ということになりますからね。もう一つ言えば、「騙される方が悪い」のがアメリカです。だから、企業は庶民からむしり取ることを何とも思ってません。日本みたいな「企業の良識」なんて最初から期待する方が間違ってます。

 さあ、日本の皆さん、それでも「非関税障壁を撤廃して日本の社会を市場原理に任せるTPP」入りたいですか。【引用元